「そばかすの少年」(ポーター)①

人格者たちの清々しい言動を味わいましょう

「そばかすの少年」(ポーター/鹿田昌美訳)
 光文社古典新訳文庫

片手を失い、
自分の本名すら知らない
孤児「そばかす」は、
「リンバロストの森」の番人として
働くことになる。
大人でさえ恐怖を抱く森と沼地、
孤独と恐怖、
厳しい自然と闘いながら、
愛情に包まれて「そばかす」は
逞しく成長していく…。

感動、感動、また感動。
冒頭から終末まで、
全編に渡って感動の尽きない小説です。
しかもハッピーエンドです。
底抜けに明るい
アメリカ文学らしい作品なのです。
何といっても、
登場人物がみな素晴らしいのです。

主人公・そばかす。
生まれてすぐ片手を
切断された状態で
孤児院に預けられるという
不幸を背負いながら、そのような
暗い様子は微塵も見せません。
どこまでも誠実。
儲け話を持ちかけられても
きっぱりことわる。
自分の倍もある体格の悪者にも
ひるまず立ち向かう。
好きな子からキスをされても
それ以上絶対踏み込まない。
紳士的な理想の少年像です。

そばかすに恋する女の子・エンジェル。
大金持ちの娘なのですが、
誰にでも優しく快活な少女。
それでいながら、
悪人たちにとらえられたそばかすを、
機転を利かせて救出する、
機知に富んだ活動的な性格。
最後には重傷を負ったそばかすに代わり、
彼の出生を調べ上げるという
大活躍をします。

材木会社の支配人・マクリーン。
そばかすの好人物を一目で見抜き、
森の番人として雇用します。
しかも、
本当の父親であるかのように
そばかすに愛情を注ぎます。

写真家・バードレディ。
エンジェルを連れて
リンバロストの森で鳥を撮影しています。
怖いもの知らずの活動家です。

森の開墾地に住み、
そばかすを下宿させているダンカン夫妻。
優しくて力持ちの夫と、
気立てのよい世話好きな妻という、
理想の夫婦です。

実業家のエンジェル・パパ。
道理をわきまえ、
筋の通った考え方ができる大人です。
片手のないそばかすに
偏見を持つことなく接します。

最後に登場する、
そばかすの伯父夫妻。
心の広い二人です。

登場人物のほとんどが
人格者揃いなのです。
悪人は木材泥棒2人と
そばかすの祖父ぐらいでしょうか。
この人格者たちの
清々しい言動を味わうだけで、
本作品は感動に包まれてしまうのです。

小難しいことを言わずに、
本書を読んで
感動にどっぷり浸かって下さい。

※本作品の著者ジーン・ポーターは
 1863年生まれのアメリカの小説家。
 本作品以外に
 「リンバロストの乙女」が代表作です。
 私はまだ読んでいませんが。

※「ポーター」で検索すると、
 同じアメリカの小説家で
 1868年生まれのエレナ・ポーターしか
 出てきません。こちらの方は
 「少女パレアナ」で有名です。

(2019.3.25)

tpsdave2によるPixabayからの画像

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